陽巫のこと


  • 寿寿かけを立ち上げ25年目を迎えました。
    来し方を振り返りながら書き示すよう指示を受けましたので、
    自動手記の力を頂きながら、ここに書き留めていきたいと思います。
    時々お付き合い下さいませ。


    私が身体に異変を感じ始めたのは、大学を卒業した息子が留学中の事。
    漸く自分の先を見つめ、13年間経営した店を譲り、昼の仕事に就こうと考えていた時でした。
    親としての責任を終え、商いにもそろそろ飽きていました。
    スタッフに小さな店を準備し、一応の建前を立てました。
    自分の時間を作り始めた頃、将来を約束していた人からの突然の別れ。
    「面倒は見る、心配するな」
    その言葉を当てにしていた私は、途方に暮れます。
    マンション・国金の支払いだけでも多額で、保証人への責任を考えると、何としてでも払わなければならない。
    不安と失望に眠れない日が続いた頃、地方誌の隅に「タロット占い」の広告を見つけ、
    何かヒントは無いものかと訪ねてみました。
    多分初めて占いというものに縋ったかと思います。
    女の先生でとても親身に接してくれ、何度か通う事になります。
    「この人を一番弟子にします」と周囲に言い出し、
    私は威圧を感じながらもそれに従っていましたが、
    「いや、何かが違う」と強く感じ、数ヶ月で縁は切れました。
    その先生は不動明王を拝んでいて、「自分には明王の力と守りがある」と言い切っていて、
    逆らうと酷い目に合う様なニュアンスでした。
    背中にゾッとする悪寒と、強い不信感に耐え切れず、
    少しずつ距離を置き、縁切りをされるよう運びましたが、
    恐ろしかった。
    でも、この縁で得たものが三つあります。
    ・「神仏」の存在を体感した事。
    ・自動手記が始まった事。
    ・何より、こうあってはならない「反面教師」の姿をしっかりと心に刻んだ事です。
    毎月の支払いは、着物・貴金属等を売りながら過ごしました。
    最後まで身に付け、手離さずにいたカルチェの婚約指輪を処分した時、
    私のプライドと未練・執着は、やっと剥ぎ取られる事になります。
    「もう無理だ。お金が無い!」
    2枚目あたりの督促状が届いた頃は、恐くて電話にも出られず、
    派手に振る舞っていた分、外に出て人に会うのも恐かった。
    朝、眼を開けるのも辛いどん底の絶体絶命の時、
    嘘の様な出来事が起きました。
    別れた男性からの復縁の申し出です。
    この申し出に声も身体も震えましたが、
    それは怒りからのものでした。
    会った瞬間、私は彼の胸ぐらを掴み、思いっきりぶん殴り、
    「女を舐めんなよ!」と叫びました。
    そう叫んだ事でやっと吹っ切れたのだと思います。
    先の事も支払いも頭から飛び、心の底からすっきりしたのを覚えています。



  • ここから本当の不思議が始まります。
    「彼から復縁の申し出があります。それは今月中の事」
    見えざる力で綴られていく自動書記は、こう告げていました。
    「有り得ない」と聞き流していたけれど、
    昨日は8月31日でした。
    その大事な日を、自分の怒りをぶつける事で台無しにしたのです。
    いくら後悔しても立ち上がれないほど私は落ち込みました。
    少し話は逸れますが、私にはプツンと切れる沸点があります。
    それは主に男性から女性に対する酷い扱いの時です。
    過去にこんな事がありました。
    店を終えスタッフを連れて歩いていた時、酔っ払いの男二人がしつこく話し掛けて来ました。
    私達が無視した事に腹を立て、ライターを投げつけたのです。
    女の子は顔を押さえしゃがみ込みました。
    それを見た瞬間、私の沸点到達!
    大きな男でしたが私は怯まず、
    「親から預かった大事な娘さんに何すんじゃ!!」
    胸ぐらを掴み怒鳴りました。
    気が付けば周りにはいつの間にか人だかり、
    「ママ大丈夫? 警察呼ぼか?」の声に男達は逃げ、
    私も正気に戻りました。
    胸の中はまだムカついていましたが、それでもにっこり笑って「大丈夫ですよ」とその場を離れました。
    翌日見たら、着物の片袖が千切れていました。
    「あぁこの話も、また広がってしまうなぁ」と憂鬱でしたが、
    案の定、巷ではもっぱらの噂になっていて、
    お陰様で店の売り上げは上々でした(笑)
    まぁこんな具合の話は幾つも有り、そんな話を聞いて笑っていた彼も、
    まさか自分が同じ目に合うとは、思ってもみなかったと思います。
    失礼、余談でした。
    さて、己の情けなさにどん底の底に落ち、ぼんやりするしかない翌日9月1日、自動書記はこう告げました。
    「貴女を守ります。心配なさいますなや」
    8月31日のお告げがその通りになった事で、
    私は自動書記の書く「知らせ」に意識を集中していきました。
    そして「知らせ」はこの日を境にはっきりとしたものになっていきます。
    朝起きたら先ず神棚の前に座し、ひたすらに指がなぞる文字を追いかけ、会話が始まります。
    「何処に行きなさい」
    「電話をしてこう言いなさい」
    「神棚の前で瞑想しなさい」
    私は全てに従いました。
    『彼から改めて申し出があります。
    「困っている事が有れば何でも言ってくれ」と言われても、その時は「何も無い」と答えなさい。何も心配する事はありません』
    全てその通りに進んで行きました。
    私の心にも生活にも少し余裕が生まれました。
    9月も半ばを過ぎた頃、まさかの出来事が起きました。
    早朝からチャイムが鳴り、何事かとドアを開ければ、四人の男の人が立っていました。
    「国税局です」そう言って中に入って来ました。
    何が起こっているのか整理の仕様も無く黙って見ていると、
    「はい、何も触ってはいけません。電話は掛ける事も出る事もいけません」
    彼等は早朝から夕方まで居座り調べていました。
    これは「知らせ」に無い事でした。



  • 何を考えてもどうにもならなかった。
    けれどそうは言ってられない。
    頭の中でカラカラと空回りする音が聞こえていました。
    無力でした。
    考えて、疲れて、寝て、
    気付けば朝、気付けば日暮れ。
    コタツに足を突っ込み多分数日(2〜3 日?)
    その有り様を繰り返していたのだと思います。
    が、はっきりとは記憶が有りません。
    彼からは何度か電話があり、
    「どうした? 具合悪いのか? 何かあった?」
    と心配されたけど、私は上の空でした。
    もうどうでも良かった。
    そんな事より、私の怒りは右指が書く「知らせ」に向いていました。
    確かにその通りになっている。
    だから信じ始めていた。
    そしたらこのザマか?
    「一体何なの? 今、国税って何? 何で私なの? バカにしてるの?」
    頭を撫でながら思いっ切り足元を掬われた思いでした。
    「ブチッ!!」と音が聞こえ、何かが弾けました。
    ふらっと神棚の前に立ち、榊や水、盃に盛った米・塩、
    全部思いっ切りぶちまけ、
    落ちた榊を拾い上げて、神棚を叩きながら叫びました。
    「お前誰や⁈ 守るって何⁈ 嘘ばっかりやないか。私のこのザマは何⁈
    何で私にまとわりつくの⁈ 何で勝手に身体を動かす。
    断りも無しに私を動かすな!! お前は嘘狐か!!」
    マンションの上下隣に響く声だったはずです。
    そして 「出て来い。受けて立つ!!」
    と、神棚の前にあぐらをかきました。
    その時です。
    ふわっと、何故だか風が吹いたのです。
    と同時に、物凄い力で私の額は床に押し付けられました。
    あぐらの姿勢のまま身体は二つに折れ重なり、
    押し付けられた額はどうにも持ち上がらず、
    どんなに足掻いてもほどけません。
    逆に息が詰まって苦しくなるだけでした。
    「こいつ、人じゃない・・・」
    私はゾクッとして、同時に無駄な抵抗だと知りました。
    息も絶え絶えに声を絞り出し、
    「すみません。もうしません。ごめんなさい」
    と諦めました。
    すると嘘のようにその力はほどけ、
    額も身体もぺらっと紙のように伸びたのです。
    私の眼は遠くを見ていて、頭の中は惚けていました。
    一体どの位の時間この見えない相手と闘っていたんだろう。
    外はすっかり暗くなっていました。
    ゆっくりと我に返り、散らかした物を拾い、砕けたガラスを片付けながら、
    「病院に行こう」 と思いました。
    「精神科に行き助けてもらおう」 と。
    疲れた。
    何というか、所詮敵わない。
    うるさい蝿がブンブンと羽を鳴らし、大きな壁に向かってへしゃげた様なものだと思った。



  • 「陽巫のこと」は、陽巫が昔を振り返りながらお喋りしています。
    様々なご相談を受ける中で、いたたまれない、やり場のない現実に翻弄されている方に対し、
    出口を探すお手伝いになるかと思います。今後、一々アップ配信は致しません。
    ご自身と重ねながら興味を持たれた方々が覗いて下されば嬉しいです。
    神事とは、格式ばって向かうのでは無く、日常の中の出会いから始まります。
    決して特別な事ではなく、しかし踏み込む覚悟が必要な世界です。まだほんの序章です。
    今後の展開、神域への誘い、是非覗いてみて下さい。 



  • 散らかした部屋を片付け、床を拭きながらボタボタ涙が落ちた。
    「私、何やってんだろう。本当に壊れたのかも知れない」
    今度は声を上げて泣いた。
    やっとベッドに這いぐったり寝ました、はずです。
    夜中、遠くから名前を呼ばれ目を覚ましたら、
    天井にふわふわと蛍が飛んでいました。
    柔らかなほんのりとした光がとても綺麗で、ゆっくりと線を引いていました。
    それはやがて輪になり幾重にも広がっていき、天井一杯に大小の輪が描かれ、
    蛍はその小さな輪の中に入っていきました。
    ひときわ光を放つ大きな粒は真ん中に集まり、やがて御顔の様な形を整えました。
    いつの間にか光の絵が出来ていました。
    こんなに光れば相当眩しいはずなのに、
    何故か大きく眼を見開いて見続けていました。
    「これは何だろう?」と。
    「曼荼羅」と教えて下さいました。
    何かが声を出して教えてくれたのか、天井に書かれたのかは覚えていません。
    御顔の周りの小さな輪が動き出しました。
    それは手になり、指になり、
    指は幾つもの形を整えながら静かにゆっくり動きます。
    私はその美しさに、ただぼんやり口を開け見ていましたが、
    御顔の目元から、私の目線は離れませんでした。
    やがて絵の動きが止まり、柔らかな光の粒に戻り、
    私の顔の上にパラパラと落ち始めました。
    真っ直ぐに落ちてくるけど、除けるにも動けず、瞼を閉じる事も出来ず。
    ただ、顔面で受けているのに痛くはありませんでした。
    見た事の無い光景に、
    「これはこの世では無い。死んだ?」
    「良かった、終わった!」
    安心しました。
    寝たのか、死んだのか、何が何だか判らぬまま、
    カーテンの隙間から射し込む外の光で目が覚めました。
    恐る恐る姿見の前に行き、
    自分が映った事で自分が生きている事を知り、
    心の底からガッカリしました。
    顔が痛くて鏡に近付くと、額は紫色に腫れ上がり血が滲んでいました。
    ようやく昨夜を思い出し、同時に思い知りました。
    今日が何日か、何をすべきか。
    この数日間、一日を三日に感じたり、或いはその逆だったり、
    まるで宙に浮いているようでした。
    突然、逃げられるはずの無い現実に連れ戻された気がしました。
    へたっと座り込んだ瞬間、とんでもない力で神棚の前に引っ張られました。
    そして、
    「今日電話が入ります。明日の誘いを受け入れなさい。
    私を信じなさい。必ず貴女を守ります」
    自動書記はそう書き、
    掛かって来た彼からの電話は、正にその通りでした。



  • 「明日会っても、お金の事は一切口になさいますな」
    自動書記は私にそう釘を刺し、私は頷き従いました。
    しかし会って一緒に居ても上の空で、会話や食事の間中、私の頭の中は支払いの事で一杯でした。
    別れ際、私の腕を掴み、
    「どうした?大丈夫か?」と聞かれました。
    その表情から、本当に心配してくれているのが伝わりました。
    「悪かった」と彼は暫く疎遠にした事に頭を下げました。
    この人にお金の事など言えない。
    でもそうしなければ、この先私はどうにもならない。
    そう思いながら、「大丈夫。少し体調が悪いだけ」と軽く笑ってこの日は別れました。
    「すぐに電話があります。その時こそお金に困っている事を打ち明けなさい」
    書記からはそう知らされていました。
    翌朝掛かって来た電話で、
    「週末会おう。元気が無いから美味しい物食べて元気をつけよう」と誘われ、
    私は「ありがとう」と応えました。
    話さなきゃいけない。前が見えない現状を。
    でもどんな返事が返って来るかは判らない。
    今そんな事を話せば、今度こそ糸はプツンと切れてしまうだろう。
    じゃどうするの?どうなるの?
    頭の中が行ったり来たりしているのは、嫌われたく無かったからです。
    書記は静かに私を導きました。
    「貴女を守ります。私を信じなさい。
    夜中に映した曼荼羅は、貴女と重なりました。
    何も心配する事はありません」
    私はこの言葉こそを心の真ん中に置きました。
    瞼を閉じると光の絵が浮かび、半開きの穏やかな眼が私を見つめました。
    「何て幸せなんだろう」そう感じる自分が不思議でした。
    土曜日、彼が迎えに来て「買い物に行こう」と言いました。
    「今欲しい物は無い」と答えると、
    「じゃあ気分転換にドライブして食事しよう」
    彼は私にとても気を遣っていました。
    ドライブの途中「実は…」と切り出したのは彼の方でした。
    政治に誘われ身辺整理をする必要があり連絡を絶った事、
    しかし自分には敵が多いし興味も消えたと話し、
    改めて「ちゃんと形を整えるから元に戻りたい」と再び頭を下げました。
    「分かった」と答えたものの、心はざわついていました。
    全部を手に入れる事は出来ない。一番大切なものは何だろう。
    でも話さないと。でも今日は言えない。
    心と頭が離れてグルグル回りました。
    瞼を閉じ曼荼羅を見つめ心を落ち着かせたいと思い、トイレに行きました。
    「今日話しなさい。貴女を守る。私を信じよ」
    あの言葉を繰り返しながら、気が付けば家まであと5〜6分位でした。
    いきなり何かに背中をポンと押され「相談があるの」と勝手に声が出ました。
    国税が入った事、他にも支払いが滞っている事等、全てを打ち明けました。
    彼は車を停めて聞いてくれました。

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